演繹法と帰納法を使い分ける方法

なぜ演繹法帰納法なのか?

推論や論理をまとめる上で、2通りの方法がある。それが演繹法帰納法だ。
なぜこの2通りだけなのか、というと我々人間の思考は、細分化すると最終的には演繹と帰納で説明できるという。
それは人間の脳が、物事を理解するプロセスにおいて、有効だとされる生物学的な側面も持つとされている。

今回はこの2つを自分なりに使いこなすため、整理してみる。

演繹法とは?

演繹法とは、いわゆる三段論法であり、大前提、小前提、結論のように段階を踏んで推論の論理を整理する方法とされている。式を次々に繋げていって推論を重ねていく方法で、一本の理由付けラインで展開される。

例文

簡単にいえば、「野菜は栄養がある→ブロッコリーは野菜だ→だからブロッコリーには栄養がある」といった文を言う。

演繹法の使い所

仮定を1つずつ真実かどうか検証していくことになるため、導き出される結論はより強い説得力を持つ。なぜなら「なぜ?」を繰り返し、深掘りをしていくプロセスを辿ることになるからだ。

ひらめきやアイデアが正しいか、仮説検証を行う際に使うことが望ましい。

帰納法とは?

帰納法は多くの事実から類似点をグループ化してまとめあげることで、結論を出す論法です。導き出した結論を補完するための事実を統計などを利用して集め、結論をより強固にすることを言う。

例文

例えば、「メッシは左利きだ」「マラドーナは左利きだ」「ディ・ステファノは左利きだ」「クライフは左利きだ」→「左利きはサッカーで世界最高峰の選手が多い」結論:「サッカーで左利きは有利になる」となるような文章が帰納法だ。

帰納法の使い所

結論が正しいかを多くの事実(統計情報など)で示すことができるため、例示して短い時間で結論を出すことができる。調査結果の正しさやなど、分析の結論に対して使うことが望ましい。

まとめ

演繹法は、ひとつずつ順序立てて結論を導き出すため、時間が多く掛かり、かつ1つでも途中の論理が破綻したら、その先にある結論に辿り着かないため、ひとつのミスが与える影響が高い。それに対して帰納法は、グループ化により、一部分でも全ての結論が導くため、必ずしも正しい結論にならず、推論の域をでない場合がある。

 

自分の今までの思考方法を振り返ってみると、個人的には演繹を使うことが多いため、時間が掛かり、ひとつのミスが大きな思い違いに繋がったりしている傾向が強い、と改めて感じた。これからは帰納法を意識して使うことを意識し、かつ2つの使い分けが自然にできるように習慣化していきたい。

上司やクライアントへの確認の頻度を多く、1回当たりの時間を短くするには

 知っている人に聞く、ということは仕事を効率よく進めるためにとても大事なことだが、私自身まだまだよくできていないと感じている。

 

 いつ質問すればよいか、どうすれば効率よく、そして相手の負荷にならないか、改めて自身で考えてみると、仕事をどれだけ早く、正確に大枠で掴むことができるか、そして大枠で掴んだ段階で相手に確認できるかだと感じた。

 

 仕事を大枠で掴むとことは、その仕事が誰のために、何の目的で行われるべきなのか、5W1Hで掴むことだと思われる。

 

 多くの場合、仕事を5W1Hで整理するとどれかが明確になっていないことが多い。そこで仕事に取り掛かる際に、5W1Hで整理して、明確になっていないことを、知っている人に聞く。ということが聞くタイミングであり、このことを正しく早く整理することが、生産性に直結するのだ。

 

例えば、プロジェクトの課題をチケット管理する際に、その項目を検討してくれ、とタスクの場合、

  • Who(だれ):A社、B社
  • What(なに):プロジェクトの課題の定義
  • When(いつ):課題はいつチケット化するのか
  • Where(どこ):チケットを発行する人たちの場所
  • Why(なぜ):この場合、課題を管理する意味、責任の明確化など
  • How(どんなふうに):チケット管理の手段、使うサービスや、項目など

例えばWhoが明らかになっていない状態、A社とB社だけではなく、C社も使う想定で仕事を進め、アウトプットする。すると、当然レビューの場で顧客や上司に指摘を受け、その場ではじめてC社を検討に入れる必要がないことに気付いてしまう。この場合、当然だがC社用に用意した項目を検討していた時間が無駄になってしまうのだ。

 

 5W1Hで整理は、知っている人に聞くことも大事なのは上述の通りだが、誰が正確な情報を持っているか、を知る大事なことだ。仕事では多くの人が関わっていることが多い。誰がどんなことに詳しいのか、もしくはどんな人を知っているのか、を常日頃から整理されていると、誰に聞けばよいのか、自ずと見えてくる。

 

また、言うまでもなく、5W1Hはあくまで情報を整理するフレームワークであり、使う局面を間違えると望むような効果がでないこともある。例えばプログラムのバグ解析などでは、分類できない場合がある。個人的には、5W1Hは、運用や体制、計画に関係するタスクで効果を発揮すると感じている。

考えをピラミッド原則に沿って文章とする方法

前回(考える技術・書く技術)でまとめた内容は、単純に本の内容をまとめただけであり、自分なりにまだ整理できていないと感じている。

今回は、考えを論理的に整理する方法について、自分の言葉でまとめてみる。

 

ピラミッド構造

「考える技術・書く技術」にある、相手にわかりやすい文書を書くには、まず最初に全体を要約する考えを述べ、その後に個々の考えを一つ一つ説明していく、ピラミッド構造が必要と記載されている。

例えば、問題解決に関する文書を書く場合、全体を要約する考えは、対象となる問題と、その問題に対する解決方法となる。その後になぜその解決方法が正しいのか、一つ一つ個々の考えや、事実を積み重ねて説明を行うことでピラミッド構造が完成し、それが相手にわかりやすい文書となる。

  • その考えは、ひとつ下の階層の考えがグループ化されているものであること
  • グループ内の考えは、常に同じ種類のものであること
  • グループ内の考えは、常に順序付けられているいること

グループ化は、同じ種類のものである説明ができること、順序とは、演繹、時間、重要、構造の4つが基本となり、4つのうちどれなのか、またなぜその順序としたのか、説明ができるよう配置していくことだ。

例えば、私の好きなフットサルの試合で、自分のチームの得点者が誰かわからなくなる問題がある。そのため、簡単に記録できるスマートフォンのアプリを作ることにした。そのアプリはチームのメンバーの情報が事前に登録できる。フットサルでは、1試合に出られるプレイヤーは4人だが、その4人をチーム全員からタップ&ドロップで簡単に選ぶことができる。そして、ゴールを決めたときはその4人のうち、該当者をダブルタップするだけで、記録することができる。もちろん、この記録は試合・日付ごとに分類され、あとで集計結果をみることも可能だ。このように、短い試合時間に誰でも入力できる仕掛けをもったアプリがあれば、チームの得点者が誰か、ある時点で誰が一番得点しているのか、または誰がしていないのか、簡単に分かることができる。

上記が即興かつ短いが、ピラミッド原則を応用した、例文となる。まず全体の考えとして解決したい問題と、解決方法を述べ、その後、なぜそれが解決となるのか、ひとつひとつ個々の考えを述べていった。

今後もピラミッド原則を頭に入れながら文書を作るよう、習慣化していきたい。

ロジカルシンキング、ライティングの練習を習慣にするには

 前回の「考える技術・書く技術」では、MECEロジカルシンキング・ライティングの基本原則を学んだが、実際に自分の技術として身に付けるために、日々練習することが必要と感じた。

日々練習することを習慣化するためには、どうすればよいか、を考えたところ、以前読んだ本「速さは全てを解決する---『ゼロ秒思考』の仕事術」にその練習方法が例として載っていることを思い出した。今回はその内容をまとめてみる。

 

速さは全てを解決する---『ゼロ秒思考』の仕事術

速さは全てを解決する---『ゼロ秒思考』の仕事術

 

 

第3章に「思考のスピードを上げる具体的な方法」として下記が紹介されているが、この内容はロジカルシンキングの練習を習慣化することについて必要なものが書いてると感じたので、下記する。

メモ書きで「ゼロ秒思考」を目指す

A4用紙を横置きにして左上にタイトル、右上に日付、本文を4〜6行で各20〜30字程度書く。この1ページを1分で書き、朝起きてから夜寝るまでの間に毎日10ページ書くと頭が非常にすっきりする。これをメモ書きと呼ぶ。

メモ書きは、気がかりなことが頭に浮かぶたびに、溜めずに全部メモに吐き出していくことがよい。

書くべきタイトルは例えば

  • 上司はなぜ新プロジェクトを任せてくれなかったのか
  • 次の会議の議題は何にすればよいのか
  • 彼(彼女)からメールが3日間ないが、怒っているのか
  • 彼(彼女)にどう謝るべきか

などだ。気になるたびに吐き出すことで、自分が何を気にしているのか、もやもやしているものは何なのか、どうして嫌なのか、が整理されてくる。

異次元のスピードをもたらす仮説思考

仮説思考とは、「これはこうかな」とおおよその自分の考えを持つこと、持とうとすることを本書ではいっている。例えばアパレルECストアを開発する場合、服を買うとき、人が何に困っているのか、何がうっとうしいのか、世の中で言われているほど服を買うことは楽しい時間なのか、お客様の立場に立って徹底的に考えぬく。そうすれば、ショッピングが好きだという女性であってもじつは時間があまりなく、結構面倒だと思う人も多いのではないかと想像が働くようになる。

仮設は検証しなければ意味がない。仮設の検証はインタビューや不具合情報の分析などによって行う。インタビューは、むずかしく考えず、一番知ってそうな人をすぐつかまえてともかくいろいろ聞く。インタビューや不具合情報の分析をベースに、最初の仮設を素早く修正する。

「仮説思考」というと難しそうだが、雨が振りそうだから傘を持っていくなど、日常生活で誰でもごく普通にやっていることだ。

仮設思考ができる人は、常に仮設構築、検証、仮説修正、検証というステップを電光石火に回している。

ゼロベース思考にも取り組む

ゼロベース思考は「本来どうあるべきか」「本当はどうなってないといけないか」を前例や現状にとらわれず、徹底的に考えぬくことだ。メモ書きと相性がよく、日々のメモ書きを行っているときにゼロベース思考を取り入れるとよい。

「深掘り」で真実を追求する

メモ書きをしながら、あるいは仮説思考やゼロベース思考をする上でさらに重要なのは、聞いたこと、考えたこと、感じたことを深掘りすることだ。

納得するまで「なぜ」を繰り返し、人に聞いたこと、新聞・雑誌・ネットで読んだことを根本から疑い続ける。人を疑うのではなく、聞いたことも見たことも全て自分で咀嚼し、必要に応じて調べ「なるほどね」と思うまで考え続けることだ。

深掘りをするうえでのポイントは、丁寧な姿勢を崩さないものの、相手が少しくらい面倒そうでも遠慮せずに聞き続けることだ。ただ、質問する際に注意すべき点がある。よくわからないから聞くわけだが、相手への好意と尊敬の念を持って質問することだ。ぜひにこやかに、丁寧な口調でうまくリードして質問を続けていく必要がある。でないとちょっとうるさいやつになってしまう。仕事のできる人とできない人の大きな違いは、適切なスタイルでどこまで質問できるかという点に現れる。

  • 相手が少しくらい面倒そうでも、疑問に思ったら「なぜ」を続ける
  • 簡単そうだが、相当の努力が必要。問題意識と好奇心が極めて強くないと質問が続かない
  • 考える訓練として格好の場になる
フレームワーク作成トレーニング

物事を整理するための枠組みで、2✕2、あるいは3✕3で整理する。複数のアイデア、問題点を2軸、4つの箱で整理することで、アイデアや問題点を切り分けられる。優先順位が明確になり、効果的に取り組みやすい。

フレームワークは使いこなすことは結構むずかしい。「好きな食べもの」「読みたい本」などちょっとしたことをタイトルにして、2✕2のフレームワークで整理すると練習しやすい。A4用紙を横置きにして、2✕2のフレームワークを上下に3個ずつ計6個書き、コピーする。毎日1ページ、6個ずつフレームワーク作成の練習をするとよい。

 

終わりに

習慣化させることは、自分も苦手なので少しずつはじめて、続けていきたい。まずはメモ書きを1日10分から行っていこうと思う。

考える技術・書く技術

今回は、MECEで有名なこの本についてまとめてみる。

本書は、コンサルティングファームの新人が必ず読まされるとか、ハーバード・ビジネススクールのテキストにもなっているとか言われる、ロジカルシンキング・ロジカルライティングの決定版である。

 

 

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

 

 

第1部 書く技術

第1章なぜピラミッドなのか?

 ピラミッド型(Q&Aのプロセス)の展開は、読み手の頭の中で起こる基本的なメカニズムを反映している

 

 マジックナンバー7(5+2)でストップする
 関連付けの論理を明らかにせよ
 
 トップダウンに配列する
  →最もわかりやすい順序とは、まず全体を要約する考えを述べ、そのあとに個々の考えをひとつひとつ説明していくこと
 ピラミッドの各メッセージは、ひとつの考えの下に、ピラミッド構造を構成する
  1. どのレベルであれ、メッセージはその下位グループ群を要約するものであること
  2. 各グループ内のメッセージは、常に同じ種類のものであること
  3. 各グループ内のメッセージは、常に論理的に順序づけられていること
   ●演繹の順序(大前提、小前提、結論)
   ●時間の順序(1番目、2番目、3番目)
   ●構造の順序(北から南、東から西、等)
   ●比較の順序(1番重要なもの、2番目に重要なもの、など)
第2章ピラミッドの内部構造はどうなっているのか?

 ピラミッド構造を書く前に、自分の考えを正確に発見しなければいけない

 その発見プロセスは
  ●主ポイントと補助ポイント間の縦の関係
   ピラミッド構造はQ&A形式の対話スタイルになる。なぜ?なぜ?なぜ?で深堀りする
  ●補助ポイント同士の横の関係
   演繹的論理でグループ分け
   帰納的論理でグループ分け
  ●導入部のストーリー展開
   導入部は読み手に疑問を思い出させる
 
第3章ピラミッドの構造はどうやって作るのか?

ピラミッドを作る

  • 主題(テーマ)を明らかにせよ
  • 「疑問」が何かを決めよ
  • 「答え」を書いてみよ
  • 「状況」と「複雑化」によってその「疑問」が導かれるかどうかをチェックせよ
  • 「答え」が妥当かどうかをチェックせよ
  • キーラインを埋める作業に取りかかれ
第4章導入部はどう構成すればいいのか?

導入部を書く

  • 「状況」を述べよ
  • その状況で、「複雑化」が発生し、
  • その複雑化が「疑問」を引き起こし
  • その疑問に対しあなたの文書が「答え」を出す
第5章演繹法帰納法はどう違うのか?

論理的に理由付ける

  • 演繹法は一本の理由付けラインで展開する
  • 帰納法は類似の考えや関連する行動をグループ化する
  • キーラインレベルでは帰納法の方が、演繹法よりも望ましい

第2部 考える技術

第6章ロジックの順序に従う

論理的順序の種類

  • 時間の順序(自分の考えを述べるとき、プロセス・フローとして図示するならば
  • 構造の順序(自分の考えを述べるとき、構造にコメントするならば
  • 重要度の順序(自分の考えを述べるとき、分類を行うならば

行動の考えを配置する

  • 各ポイントは最終結果物をイメージできる表現とせよ
  • 同一結果を導くアクション群をひとつのグループとせよ
  • グループ化の根拠になるプロセスや構造を明らかにし、その順序に従い配置せよ
  • 見落としたアクション・ステップがないかどうかをチェックせよ

状況の考えを配置する

  • 同じ種類で表現される考えをひとつのグループとせよ
  • グループ化の根拠となる構造や分類を明らかにせよ
  • 各ポイントを主題・述語を備えた文章形式に書きなおした後、配置の順序を決めよ
  • 見落としたポイントがないかチェックせよ

グループの考えを要約する

  • 行動の考えを要約する場合、それらアクション群を実行することにより直接得られる結果を述べよ
  • 状況の考えを要約する場合、それらポイント群の類似性の意味を述べよ
第7章グループ内の考えを要約する

考えの類似性を発見する

  • 各考えがすべて同じテーマについて述べている
  • 各考えがすべて同じアクションを必要としている
  • 各考えがすべて同じ対象に対するアクションについて述べている
  • 各考えがすべて同じ洞察結果を意味している

行動の考えをリスト化する

  • 各ポイントを裸にし、類似のキーワードでグループ化せよ
  • 各グループのレベル(階層)の違いを明らかにせよ
  • 各ポイントは最終結果物をイメージできる表現とせよ
  • アクション群の実行から得られる結果を述べよ

状況の考えをリスト化する

  • テーマ(主題)、具体的表現(述語)、目的(目的語)、意味するものなどの類似点を発見せよ
  • 各ポイントをできるだけ狭くグループ化せよ
  • そのグループ化が何を意味するのか(推論)を述べよ

第3部 問題解決の技術

第8章問題を定義する

問題を定義する

  • 問題が発生した分野を目で見えるように図式化せよ
  • 今までの安定を覆すような出来事を述べよ
  • 望ましくない結果(R1)を明らかにせよ
  • 望ましい結果(R2)を具体的に述べよ
  • その問題を解決するために、今まで何らかのアクションが取られたかどうかを明らかにせよ
  • 分析の目的、すなわち分析により答えるべき疑問を明らかにせよ
第9章問題分析を構造化する

分析を構造化する

  • 問題を定義せよ
  • 診断フレームワークを用い、問題分野の詳細構造を明らかにせよ
  • 問題の原因を仮設的に設定せよ
  • 設定した仮説の妥当性を証明(または否定)するデータを収集せよ
終わりに

本書を読む前、私は書くこと、考えることについては方法論などが存在せず、練習が必要なものだと漠然と考えていた。

本書で書くことの必要性を訴え、書くことで考えを整理し、最終的に文章をピラミッド構造とすることで相手に伝わる文章となる、という方法論が存在することに驚いた。

考えを書き表す順序をしっかりコントロールすることは、わかりやすい文章を書く上で最も重要なことのひとつである。そして、最もわかりやすい順序とは、まず全体を要約する考えを述べ、そのあとに個々の考えをひとつひとつ説明することである。

上記を重要なポイントとして常に考え、日々繰り返し練習することで、内容を習得していこうと思う。

外資系コンサルが実践する資料作成の基本

今回は、常に仕事上向上することが求められる、資料作成の技術について、以前購入した本を読み返してみた。当時は、わかった気になり、身になるまで実践しなかったことが多く、本に書かれている大事なことを多く忘れている自分に気付いた。

これを機に、大事なことをまとめてみようと思う。

 この本は、文書作成で基本となる要点と、作成する資料の種類(PowerPointExcel、Word)に応じて王道となるテクニックを紹介している。

テクニック部分については、リファレンスとして参照できるので、今回は資料作成の基本要点をまとめてみることにする。

はじめに

本書は、効率良い資料作成の手順として、以下の3段階でレビューを受けるべき、としている。

  1. ケルトン作成
  2. ドラフト作成
  3. フィックス

1.スケルトン作成は、資料のコンテンツを目次レベル+概要説明レベルで作成したもの

2.ドラフト作成は、スケルトンに従って資料を一通り作成したもの

3.フィックスは、ドラフトを更新して第三者へ見せる品質に仕上げたもの

としている。本書の構成も上記に分かれている。

1.スケルトン作成

WHO、WHY、WHATを明確にする。

WHOは資料を見せる相手を意味する。相手が求める資料の内容はどのようなものが良いか、常に正しく把握する必要がある。

WHATはその資料を使うねらいを意味する。意思決定なのか情報共有なのか、作成する資料によって相手に何をしてほしいのかを明確にする必要がある。

WHYは「相手」と「ねらい」が妥当である理由を意味する。

プロファイリングで効果的に伝える

相手の特徴を分析(プロファイリング)し、相手に最も効果的に資料内容を伝える方法を考える。相手(WHO)の持っている、資料への期待と理解度を加味して、相手が納得する情報の示し方を考える必要があります。

目次単位にPREPで論点を列挙する。

資料のWHAT(ねらい)を伝えて受け入れてもらうには、その主張を支えるWHY(理由)を伝えるだけではなく、WHO(相手)にとってメリットがあることにも触れる必要がある。こうした流れを表すのに適しているのが、PREP法である。

PREPとは、Point(主張)、Reason(理由)、Example(事例)、Point(まとめ)の流れを表した言葉であり、相手の理解を得やすい説明アプローチとして知られる。

相手の「なぜ?」に耐える理由を示す

ケルトンにPREPを組み込むことができても、そこに含めたR(理由)がよく考えられていなければ、相手は資料の内容に疑問を持ってしまう。

そうした事態を招かぬよう、スケルトンを作る段階から、主張の理由に当たる妥当性をチェックする必要がある。やり方は、内容に対して「なぜそう言えるのか?」と根拠を考え、さらにその根拠に「なぜそう言えるのか?」と妥当性を掘り下げる。資料作成者がうまく説明できない部分は、相手も理解することはできない、そのことを意識して資料の構成を考える必要がある。

異論は最初に主張しない

相手の意見と異なる主張を述べる場合には、更なる注意が必要である。相手は理由もなく冒頭から自分の意見と異なる主張を示していると、多くの場合は「自分の考えを否定された」とネガティブなサプライズと捉えて反発する人が多いためである。

そのため、最初のP(主張)に結論を明記せず、最後のまとめ(P)を使って反応を伺うやり方を採用する必要がある。相手の意見に同意を示しつつ、それとは別のやり方にも見るべき点があることを匂わせるよう試みることだ。

2つのスタイル✕6つの発想で案を示す

相手に判断を求める際、大きく分けて、当事者、専門家の2つスタイルがあります。相手、状況により使い分けることが重要である。

  1. 主体性に優れる当事者
  2. 客観性に優れる専門家

活動の実行責任を自分が担う場合や、相手がどうしたら良いか判断に迷っている場合は、主張部分で自分の推薦案を示し、理由部分と事例部分で主観を交えた深みのある説明を行い、まとめ部分で相手の承認を得るという構成の方が、「主体性に優れる当事者」として周りの賛同を得やすくなる。

 活動の実行責任が資料を見せる相手にある場合や、自分の中である程度決めている相手には、主張部分で複数案を示すに留め、理由部分と事例部分で客観的な事実の列挙と優劣の比較を行い、まとめ部分で重視する観点別に最も評価の高い案を選ぶという構成で組んだ方が、「客観性に優れる専門家」として相手の信頼を得やすくなる。

相手に自分の主張を伝えるに当たって、当事者もしくは専門家のいずれの立場で臨むにしても、押さえておくべき定石があります。それは6つの発想パターンとして知られている。

  1. つみあげ確認型(演繹法ロジカルシンキング
  2. 論より証拠型(帰納法:同上)
  3. ひらめき発見型(類推思考:ラテラルシンキング)
  4. トライ&エラー型(仮説思考:同上)
  5. 1+1=3型(弁証法クリティカルシンキング
  6. ひかえめ誘導型(背理法:同上)

上記6つの発想パターンは、以下に示す基準で使い分けると、その効果を発揮しやすい。

  • こちらの主張に否定的な相手向け → 1.つみあげ確認型
  • データにもとづく判断をしたい相手向け → 2.論より証拠型
  • 斬新な発想を求める相手向け → 3.ひらめき発見型
  • 一般論を好まない相手向け → 4.トライ&エラー型
  • 自論を取り入れないと納得しない相手向け → 5.1+1=3型
  • 自分の主張こそ正しいと信じている相手向け → ひかえめ誘導型
目次構成は1枚の紙に書いて整理する

まず目次構成を紙に書き出すことから始める。いきなりPowerPoint、Word、Excelに書き込むことはおすすめしない。そこで切り離し可能なA4用紙を用意し、目次構成を1枚の紙に列挙する。1つの目次見出しつき、PowerPointならスライド単位、Wordなら段落見出し単位、Excelなら表単位とし、依頼者へレビューする。指摘が少なければドラフト作成のステップへ、指摘が多ければ再レビューを依頼する。

2.ドラフト作成(文、表)

資料のレイアウトを統一する

資料のレイアウトはヘッダー部/本文部/フッター部に領域を分けて統一する。Excelは条件に応じてシートを分けて作成する。

フォントを決める

推奨する通常指定フォント

推奨する見出し指定フォント

  • Windows 上記通常指定フォント、HGP創英角ゴシック
  • Mac 上記通常指定フォント、ヒラギノ角ゴ 太字

推奨する数字向け指定フォント

  • 両環境共通 通常指定フォント、Arial Black
書式と配置を揃える

ドラフト資料の見栄えは、書式と配置で8割決まる。

行間&段落間インデント、図表の大きさ、位置、余白を合わせる。

  • 行間インデント指定:(余裕)1.2倍、(標準)設定不要、(字詰)0.85倍
  • 段落間インデント指定:フォントサイズの0.5倍
  • 余白指定:上下&左右 ※箇条書き時、左は右の1.5倍

   (8pt未満)全0.1cm

   (8pt〜16pt未満)0.1cm&0.2cm

   (それ以外)全0.2cm

  • 整列機能を使って文章や図形の位置揃えを行う

   (PowerPoint

     →3行以内のメッセージラインをスライドごとに最初に作る

     →左上から右下へ流れるようにスライド内の導線を作る

     →要素の意味単位でかたまりを作る

   (Word)

     →見出し単位の段落番号を設定する

     →見出し単位で段落開始、終了位置を確認する

     →図形の挿入時は、文字の折り返し位置設定をする

   (Excel

     →シートの左端と上端は1行1列ずつ空けてから使う

     →セルの高さと幅について基準を設ける

用語の定義を統一する

相手が誤解や理解不足に陥らないよう、資料で用いる専門性の高い言葉を定義した用語集を作る。

文章をスリムにする

相手に誤解を与えないよう、余剰な表現は削り落としていく。1つの文章の中に読点(、)が4つ以上登場する。もしくは120文字(A4紙で4行以上)を超える場合は、文を分割する。

定量的な表現にもとづいて説明する

あいまいにならないよう、期限・度合の表現は必ず具体的な数字で説明し、判断に用いるデータは数値を使って説明する。

テキストボックスを読みやすくする

行当たり折り返し設定、行数、位置揃えにルールを設ける。

(1行当たり文字数)5文字以上35文字以下 または 行数✕2以上

(1行文章)左揃え、右揃え

複数行文章)両端揃え

(選択肢、数値)中央揃え

表項目はツリー階層に組み合わせる

すべての項目を横に平たく並べるのではなく、意味のある要素ごとにツリー階層を作る。列項目は2〜3段の組み合わせに整理する。読み手の立場になり、左&上から順に読み進めて理解できるように列項目を順に並べる。

重複内容はグレーで残す

あとで検索や絞り込みが簡単に行えるよう、重複する内容は薄いグレー文字で残す。

選択式の項目値や説明は別シートへ

複数セルから参照される共通の可変数値や選択式の項目値はまとめて別シートへ管理する。

セル結合は使用しない

範囲指定を使って関数を設定する場合に編集作業が煩雑になるため、セル結合は使わない。複数セルにまたがる項目名は「選択範囲内で中央」を使う。

細かい情報はグループ化で表示させない

要旨を伝えるサマリー表を簡単に示せるよう、結論や集計結果の根拠となる詳細情報はグループ化して表示/非表示を切り替えることができるようにする。

外枠は実践、罫線は点線を基調にする

野暮ったい表の形式に読み手がネガティブな印象を持たれないよう、表の見た目をすっきりさせる。なくても分かる罫線は削除する。

3.ドラフト作成(図)

チャートとグラフを使い分ける

文章だけでは伝えにくい説明には図表を用いる。図表には、目で見て判断するための概念的なチャートと、データで判断するための統計的なグラフに大別でき、目的に応じて使い分ける。

チャートを使って情報を図解する

タテヨコ・関係性・時系列の3タイプでチャートを作成する。

チャート①優先順位を図解する

(タテヨコ:象限図)分けられた領域ごとに優先順位を付けることができる。

チャート②一覧で図解する

(タテヨコ:マトリクス図)横の要素に重複がなく、縦の要素は同類の内容を並べるのに使う。

チャート③ロジックを図解する

(関係性:階層図)要素を分かりやすい単位に細分化するのに適している。

チャート④グループ分けを図解する

(関係性:集合図)複数のグループにまたがる要素を洗い出して、それらを検討する際にこの図を使って整理する。

チャート⑤関係性を図解する

(関係性:相関図)コミュニケーションやシステムや機能の相互関係を分かりやすく把握できる。

チャート⑥フェーズの変化を図解する

(時系列:展開図)時間軸に沿って対象の変化(成長、拡大、発展など)をフェーズごとに把握する。

チャート⑦時間に沿った順序を図解する

(時系列:プロセス図)おもにフローチャートガントチャートなど、スケジュールを表すのに使う。

チャート⑧繰り返しの流れを図解する

周期的なイベントや一過性で終わらせたくない改善活動を説明する際に使う。

グラフを使って統計情報を図解する

量・変化・分布の3タイプの指標でグラフを作成する。

グラフ①大きさを図解する

(量:棒グラフ)規模の大小を感覚的に把握するのに使う。

グラフ②割合を大きい順に図解する

(量:円グラフ)分析対象データに占める上位数種類の要素を特定したり、要素間の割合を比較するのに役立つ。

グラフ③割合を網羅的に図解する

(量:面積図)分析対象データに占める上位数種類の要素を特定したり、要素間の割合を比較するのに役立つ。

グラフ④時間に沿った変化を図解する

(変化:折れ線グラフ)対象の傾向分析に役立つ。

グラフ⑤量の変化を図解する

(変化:面グラフ)上限値を意識した傾向分析に役立つ。

グラフ⑥量のばらつきを図解する

(分布:ヒストグラム)要素の同数分布を把握するのに役立つ。

グラフ⑦ばらつきの関係性を図解する

(分布:散布図)要素のばらつきから特定の観点にもとづく傾向を見つけるのに役立つ。

グラフ⑧最大と最小の広がりを図解する

(分布:エラーバーグラフ)集計結果に対するベストケースとワーストケースを把握するのに役立つ。

グラフ⑨多面的な評価を図解する

(分布:レーダーチャート)スコアカードによる指標値の測定結果を把握するのに役立つ。

図形の形状にルールを設ける

図形が持つイメージを利用して直感的に分ける使い方をする。

図形①情報や概念を図解する
  • (四角形)具体的、事実
  • (三角形)上下関係、目標、マイルストーン
  • (丸四角形)抽象的、推測
  • (円形)あいまい、概念
  • (扇型)割合
図形②つながりの向きと強弱を図解する
  • (直線・カギ線)明確な紐付き
  • (曲線)緩やかな紐付き
  • (実線)継続的なつながり
  • (点線)一時的なつながり
  • (標準矢印)普通の相関
  • (開いた矢印)緩やかな相関
  • (鋭い矢印)強い相関
  • (ひし形矢印)強いつながり
  • (丸型矢印)やや強いつながり
図形③集合関係を図解する
  • (大かっこ)まとまり
  • (中かっこ)集約元と先
図形④時間の流れや状態変化を図解する
  • (矢羽)時間の流れ
  • (三角形・ブロック矢印)状態の変化
  • (ブロック吹き出し)内容に対する結果
図形⑤理由や説明を図解する
  • (四角形・線形吹き出し)具体性のある理由、追加情報
  • (丸四角形・丸形吹き出し)意見や推測
  • (雲型吹き出し)推測や思い

標準にはない図形を表現する

  1. 図形の組み合わせ
  2. 頂点の編集
  3. フリーフォーム機能によって、標準にない新しい図形を作る

変更時に手間が生じない図形を使う

重ねる図形は順序と透かしを設定する

位置揃え/サイズ指定/図形の変更をする

最初は色を使わずに作る

最初から多種の色を使うのではなく、まずは色を使わずにページを作成し、強調や色分けが必要な箇所を見極める。

強調・基本・極薄のベースカラーを決める

カラーパレッド(色相✕彩度)から好きな色を選ぶ。次に明度から「強調色」を最初に決め、さらに明度を半分弱めた「基本色」、その半分に弱めた「極薄色」を定める。それ以外は背景色と同じにするか「無彩色」を使う。

  • (強調色)特に注目を集めたい箇所に用いる。1ページ数カ所のみ
  • (基本色)見出し、注目を集めたい箇所に用いる
  • (極薄色)ある程度は意識してほしい箇所に用いる
  • (無彩色・淡)見やすさのために色付けする箇所に用いる
  • (無彩色・濃)無彩色・淡よりも強めに表現したい箇所に用いる

相手に合わせてベースカラーを使い分ける

相手組織が持つテーマカラーに合わせてベースカラーを用意する。特に指定がない場合、感情的に訴えかける資料は暖色系、論理的に訴えかけたい資料は寒色系を使う。

パターンを使って色数を減らす

塗りつぶしにパターンを用いることで、単色で複数の内容を表す。

Excel表は意味の単位で色系統を分ける

  • (全体)セル全体を選択して背景色を白にする
  • (列)第1層を強調色、第2階層を基本色、第3階層を極薄色にする
  • (セル)ベタ打ちセルは白色、自動算出セルは薄黄色の背景にする

4.フィックス作成

印刷時に文章が切れないようにする

Excel表内で文章が書かれたセルすべてに対し、セル末に改行(Ctrl+Alt)を挿入する。文末がセル右端に近接している数だけ改行数を増やす。

グレースケール設定を行う

スライド内の全オブジェクトにグレースケール設定を行うことで、意図しない線の表示や白黒反転を防ぐ。

メモやファイリング向けに余白を作る

印刷資料をクリップで閉じたり、メモを書き込める余白を確保するために、ヘッダー・フッター・資料両端の余白を整える。または余白を極限まで減らすことで、1枚の紙に表示されるコンテンツ量を増やす。

Excelの印刷範囲とサイズを確認する

Excel資料は印刷範囲・印刷タイトルを設定し、用紙サイズもExcel側とプリンター側で一致させる。

不要なスライドマスターを削除する

PowerPointの資料は、スライドマスターに登録されている不必要なマスターを削除してからファイルを配布する。

目に見えない情報を資料から取り除く

ヘッダー/フッターと属性情報に設定されている内容を確認し、不要なものを削除する。

資料の書き換えを防ぐ

内容を変更させたくない資料は、保護設定またはPDF形式にファイルを変換し、読み取り専用にしてからファイルを配布する。

終わりに

今回は資料作成に必要な王道パターンを本書より学ぶことが出来た。今後はこれをもとに資料作成し、文書作成のスピードが上がるよう実践を繰り返して習得していきたい。

「会議ファシリテーション」の基本がイチから身につく本

仕事上、早急にファシリテーション技術を身に付ける機会ができたので、本屋で何冊か斜め読みしたところ、個人的に一番解りやすくまとめられていると感じた書籍を購入した。

 

「会議ファシリテーション」の基本がイチから身につく本

「会議ファシリテーション」の基本がイチから身につく本

 

 今回は書籍から学んだことを自分なりにまとめてみた。

 

はじめに

会議の進行役となるファシリテーターは、必ずしも高度な技術と参加者全員から信頼される人間性、かつ何度も実践を繰り返す訓練が必要ではない。

ファシリテーターの技術は奥が深く、それらを極めるには大変な努力と経験が必要となる。しかし、ファシリテーターの技術の中には誰にでもすぐ使える技術がたくさんある。その技術を知り、活用するだけでも、会議が変わる。

この本は誰でもすぐに実行できるファシリテーターの技術を紹介する。

 

ファシリテーション」の本質はごくシンプル

まったく新しい会議手法「ファシリテーション

会議で不満がでるのは、会議で決まったことが実行されない。参加者が決定事項に「納得」していない場合が多いから、としている。これには私も同感で、私が今まで考えていた会議は、とにかく結論を出すことが大切と考えられ、とにかくキーマンと言える意思決定者が決めるべきことを決めてしまい、参加者の納得が出来ていないものが多かった。

この本では、会議の目的を「決める」ことから「参加者が納得する」ことに変えた会議「合意形成型会議」とし、その進行役のことを「ファシリテーター」といい、そのスキルを「ファシリテーション」としている。

ファシリテーションは「意見を整理する技術」ではなく「参加者の合意を図るスキル」

「意見の整理をする」というのは、合意を図るためのひとつの手段に過ぎない。このことに進行役が集中してしまうと、参加者の納得が図ることが出来ずに、「決める」会議となってしまう。

では「合意」を図るために何をすべきか、となると「できるだけたくさんの意見を引き出す」ことにあるとしている。なぜなら、参加者の思いを十分に語ることにより合意が生まれるからだ。そして、その思いを十分に語るくらい活発な発言が出るためには「自由な雰囲気」が必要としている。

ファシリテーターと今までの「議長」は何が違う?

議長は議決権があり、リーダーであることが多く、自分が会議の意見を整理する権限がある。しかし、ファシリテーターは議決権がなく、リーダーではない、参加者に意見を整理させる。という違いがある、としている。

議長が行う会議には必ず「落としどころ」という既に決まった結論があるが、ファシリテーターが行う会議には「落としどころ」はない、参加者全員の合意を得るためにはあってはいけない。なので、必ず中立を保つことが重要となる。それに必要なスキルは誰が使っても同じ効果が出るもの、としている。

ファシリテーターに必要なコミュニケーションの技術

会議とは「コミュニケーションの場」であり、論理的に話すだけでは通用しない。理屈が通っていても、参加者の感情を無視して話を進めることはできないからだ。

したがって、ファシリテーターには次のようなコミュニケーションの技術が必要となる。

  • 雰囲気づくりの技術
  • 人を動かす技術(意見を整理させる技術もこのひとつ)
  • 人をほめる技術
  • 場を読む技術
  • 思いを引き出す技術
  • 人の話を聴く技術
ファシリテーション」がもたらす5つの効果

会議が参加者の”主体性”と”可能性”を引き出しながら、結論を導き出す場と考える。そのことにより、次のようなすばらしい効果が現れる。

  1. 発言が活発に出るようになる
  2. 決めたことを実行するようになる
  3. 能力を最大限に発揮するようになる
  4. 発言力の弱い人でも意見が言える
  5. 自分の組織に誇りを持てるようになる

次章より上記の効果を引き出すためのファシリテーションのやり方を記載している。

ファシリテーション」の基本

「楽しさ」のパワーこそ会議を充実させる原動力

会議とはまじめにやろうとすれば、堅苦しく緊張してしまい、活発な意見がでないものになる。

人は楽しみながら、どんどん話して決まったことに納得するものであり、合意形成型会議の基本は「楽しい=自由」な雰囲気である。

集まった「全員の意見」を尊重する

みんなに平等に発言させることが重要であり、日頃あまり発言をしない人が発言するようにする。それには「発言回数・発言時間を一部の人に偏らせない進行にする」ことが必要となる。普段あまり発言しない人が発言すると、参加者全員が何を言うのだろう?と興味を持つことが多い、そうなるとお互いに”意見を聴き合う”雰囲気がでてくる。

ファシリテーターは率先して意見を整理しない

「出された意見を整理するのは進行役の仕事」と思っている場合、参加者は「進行役、早くうまく整理しろよ、それが仕事だろ」とまるで他人事のように議長の動きを見ていることになり、主体性が生まれない。そのような場合、ファシリテーターは次のように指示する必要がある。

「みなさん、今出された意見を整理するとどうなりますか?」

つまり参加者が自分で整理することにより、主体性を持たせ、決まった意見に納得感を出すことができる。ただし、参加者に任せきりだと、通常の場合は時間がなくなって結論が出ないという事態が起こるので、その場合はファシリテーターがリードして整理する。

「いい意見」より「たくさんの意見」を引き出そう

最初から「ご意見ありませんか?」と尋ねると参加者は「いい意見を言わなくては」と考えて気楽に発言できなくなってしまう。

「これについて考えられることをできるだけたくさん言って(書いて)ください」と尋ねた方が参加者も気楽になり、出せば出すほど、いいアイデアが生まれてくるようになる。意見の量は、意見の質を担保する。

できれば「参加者に書き出してもらう」方が参加者の主体性や可能性が出て良い結果に繋がる可能性が高い。

会議は「発言の場」ではなく「聴き合う」だ!

会議は誰の意見がいい意見か、を決める場ではない。それではお互いに自分の意見の良い点を主張し合う、対立が起きてしまう。合意形成型会議では、個人で考える以上の考えを作り出す場であり、他の人の意見を聴くことにより、自分の意見を深めていく場です。つまり、意見を聴き合う場とすることが大事となる。

よくやりがちな失敗は「今の発言に対してご意見はありませんか?」と意見を求めてしなう場合。「〜に対して」という言い方では対立が起きてしまう。

そうではなく「他に意見がありませんか?」と出来る限りいろいろな人の意見を聴こうとする思いをベースに進行することが求められる。つまり、普段からファシリテーターは、

  • 常に人の話をよく聴くようにすること
  • 周りの人に気配りすること
  • いつも明るい雰囲気をつくるように心がけること

が求められることと言える。

会議の成功は「雰囲気づくり」にかかっている

楽しい雰囲気は「物と仕掛け」でつくり込む

雰囲気作りは話術だけではなく、物と仕掛けでつくり込むことができる。例えば

アイスブレイク。まず一言ずつ話をさせる。人は誰しも硬い仕事よりも楽しいテーマで話すことにより、楽しい雰囲気がでる。具体的なアイスブレイクには「近況報告」「みんなが知らないあの人」「最近の新聞ネタできになること」「人生で一番輝いていたとき」などがある。

資料は実物、紙に書かれた印刷物をひとつは用意する。全員分ではなく、何人かに一つが調度良い。なぜなら、みんなが同じものを見ることの方が、話し合いが生まれやすくなるからだ。

事前に資料を読んでこさせる仕組み作りは、「事前に意見を集約する」ということ。対象の資料を事前に展開し、期限を区切り、事前にまとめて提出するように指示を出すことで参加者は事前に資料を読み込む必要が出てくる。

最良の結論を導き出す「合意形成サイクル」の中身とは?

合意形成サイクルとは「個人で考える」→「グループで考える」→「全体で考える」

を繰り返しながら結論を練り上げていく方法のことで、参加者一人ひとりの思いを尊重し、満足感を引き出し、コミュニケーションを大切にして行うために必要なしくみといえる。

ステップ1.個人で考える

このステップでは、一人ひとりの思いを全部吐き出させることが必要です。そこで、まず考えをカードに書き出させることが必要となる。カードに書き出すだけで参加者はかなり胸がスーッとし、満足感が得られる。この満足感が”会議の満足感”となり、決めたことを実行していこうという意識へと繋がる。

ステップ2.グループで考える

個人でカードに思いを書きだした後、参加者の心理は「他人の書いたものを見たい!」という思いになる。この「見たい」という心理こそ主体性の芽です。グループ討議はその主体性の芽を大切にし、意見を整理することを行う。ここで気をつけるべきは意見を整理することが目的ではなく、整理しながらさらなる意見を引き出すことも大切となる。なので、グループでの話し合いは、

  • それぞれの意見を出しあう
  • その意見を整理する
  • さらにいい意見をみんなで考えてひとつの意見にまとめる

という3段階でおこなう。ファシリテーターはあくまで整理の手段を全体に通知し、整理そのものは手出ししないことも主体性を尊重する上でとても大事なこととなる。

ステップ3.全体で考える

グループごとでひとつの意見にまとめたら、その意見を全体に発表する。発表し終えたらそのあとは全体に向けて個人で意見を言う時間とする。なぜならグループで決定した意見だとしても、グループ内にその意見に反対という人間もいる場合がある。その場合、再びステップ1.個人で考える時間をとり、また「2.グループ→3.全体」と繰り返しながら深めていく。「個人→グループ→全体」でワンサイクルとなるが、通常はそんなに時間が取れないため、ワンサイクルだけで終わる場合が多い。

結論を出す時間が迫ったらまとめに入る

合意形成サイクルで話し合いが進んだ場合、どのようにまとめるか?それは結論から言うと多数決となる。なぜなら個人の思いを最大限に尊重しながら話し合ったあとの多数決となるので、参加者が実行すること自体に合意しやすい。全員が「ここまで話したのだから多数決で決めるしかないな」と合意していることが大切となる。

最後に絶対に忘れてはいけないのは「やること、担当者、スケジュール」の決定だ。これは会議で決まったことを実行するために絶対に必要となる。また、決めたことがきちんと実施されているか「進捗状況」を確認する人を決めることも大事となる。

参加者の主体性を引き出す進行の技術

会議の準備は「お膳立て」ではなく「おもてなし」

準備のやり過ぎが参加者の意欲を奪う。例えば座っていると資料やお茶が配られ、終わったら片付けをしないで帰る。など「お膳立て」を行うと、「自分は設定された会議に出て、意見を言ってるだけでいい」と思っている人を認めていることになる。それは「結論をつくるのは自分たちの責任である」という主体性な意識が生まれない状況となってしまうのだ。その場合、参加者の意識は

  • 結論をまとめるのは議長の仕事
  • 会議を時間通りに終わらせるのは議長の仕事
  • 参加者が平等に意見を言うようにするのは議長の仕事

と、全て自分の責任ではなく「議長の責任」と考えることとなる。

ではどうすれば、参加者の主体性を奪うことなく、少しでも気分よく、自分の思いを言える雰囲気をつくることができるのか、その雰囲気を作ることを「おもてなし」と呼ぶ。「おもてなし」は参加者の主体性を微妙に引き出すための方法となる。以下に幾つか紹介する。

いつでも使えて効果抜群!「みなさん、どうしましょうか?」

進行を決めるのはファシリテーターではなく参加者とする。例えば会議終了時間まであと10分となった場合、ファシリテーターは「みなさん、あと10分で結論を出さないといけません。どうしましょうか?」と参加者に問うことが大事となる。なぜなら参加者に進行を問うことにが、参加者の主体性を引き出すことになるのだ。

会議を時間通りに終わらせるための考え方

会議が時間通りになった場合は誰の責任となるか。それはファシリテーターではなく、参加者となる。大体において時間通りに終わらない原因は、参加者が時間までに結論を出すように意識した発言をしなかったことなのだ。まずその意識をファシリテーターが持つことが大事であり、時間が延長した場合、ファシリテーターはお詫びの言葉を言ってはいけない。そのお詫びの言葉が参加者を受け身の人間にしてしまう。つまり、ファシリテーターが行うことは、参加者に時間の意識を持たせることになる。それは、

  1. 時間を守れない責任の所在は「参加者」にあることを理解する
  2. 時間を守る雰囲気を作る。あと○○分です、などカウントダウンを行う
  3. 最初に終了時間に終わるように要請し、時間を守ることを宣言する

といった方法がある。

参加者がホワイトボードのところに出てきて、書きながら発言する仕組みを作る

板書をファシリテーターや板書係が行うと「意見を整理する道具」に過ぎず、意見は整理できても参加者の主体性は引き出せない。参加者がホワイトボードに出てきて書きながら発言するようにするようにすることで、「動き」のある会議となり、参加者の主体性を引き出していくことになる。ホワイトボードは他にも以下の様なメリットがある。

  1. 議論を空中戦にしない
  2. 会議に動きが生まれる
  3. 視点が集中することによる一体感が生まれる

このように主体的に会議に関わろうとするよりも、物や仕掛けを考えることがファシリテーターの技術となる。

終わりに

今回学んだことは多く、すぐに実践できることからはじめていきたい。今回学んだファシリテーターの基本を現在のプロジェクトに活かそうと考えたとき、すぐに使える技術とそうでないものがある、と感じた。それは現在のプロジェクトが、遠隔地を繋いでTV会議をしていることが多く、場の雰囲気を作ることが難しいからだ。例えばホワイトボードをすぐに共有できない、会議室の机を変えることができない、などTV会議ならではの制約が多い。しかし、いっそうグローバル化多様性が進むであろう、これからの時代では遠隔地を繋げる会議が主流となっていくことは明らかである。今回学んだことを、遠隔地で繋げる会議でどう活かしていくか、実践を行いながら検討していきたい。