「会議ファシリテーション」の基本がイチから身につく本

仕事上、早急にファシリテーション技術を身に付ける機会ができたので、本屋で何冊か斜め読みしたところ、個人的に一番解りやすくまとめられていると感じた書籍を購入した。

 

「会議ファシリテーション」の基本がイチから身につく本

「会議ファシリテーション」の基本がイチから身につく本

 

 今回は書籍から学んだことを自分なりにまとめてみた。

 

はじめに

会議の進行役となるファシリテーターは、必ずしも高度な技術と参加者全員から信頼される人間性、かつ何度も実践を繰り返す訓練が必要ではない。

ファシリテーターの技術は奥が深く、それらを極めるには大変な努力と経験が必要となる。しかし、ファシリテーターの技術の中には誰にでもすぐ使える技術がたくさんある。その技術を知り、活用するだけでも、会議が変わる。

この本は誰でもすぐに実行できるファシリテーターの技術を紹介する。

 

ファシリテーション」の本質はごくシンプル

まったく新しい会議手法「ファシリテーション

会議で不満がでるのは、会議で決まったことが実行されない。参加者が決定事項に「納得」していない場合が多いから、としている。これには私も同感で、私が今まで考えていた会議は、とにかく結論を出すことが大切と考えられ、とにかくキーマンと言える意思決定者が決めるべきことを決めてしまい、参加者の納得が出来ていないものが多かった。

この本では、会議の目的を「決める」ことから「参加者が納得する」ことに変えた会議「合意形成型会議」とし、その進行役のことを「ファシリテーター」といい、そのスキルを「ファシリテーション」としている。

ファシリテーションは「意見を整理する技術」ではなく「参加者の合意を図るスキル」

「意見の整理をする」というのは、合意を図るためのひとつの手段に過ぎない。このことに進行役が集中してしまうと、参加者の納得が図ることが出来ずに、「決める」会議となってしまう。

では「合意」を図るために何をすべきか、となると「できるだけたくさんの意見を引き出す」ことにあるとしている。なぜなら、参加者の思いを十分に語ることにより合意が生まれるからだ。そして、その思いを十分に語るくらい活発な発言が出るためには「自由な雰囲気」が必要としている。

ファシリテーターと今までの「議長」は何が違う?

議長は議決権があり、リーダーであることが多く、自分が会議の意見を整理する権限がある。しかし、ファシリテーターは議決権がなく、リーダーではない、参加者に意見を整理させる。という違いがある、としている。

議長が行う会議には必ず「落としどころ」という既に決まった結論があるが、ファシリテーターが行う会議には「落としどころ」はない、参加者全員の合意を得るためにはあってはいけない。なので、必ず中立を保つことが重要となる。それに必要なスキルは誰が使っても同じ効果が出るもの、としている。

ファシリテーターに必要なコミュニケーションの技術

会議とは「コミュニケーションの場」であり、論理的に話すだけでは通用しない。理屈が通っていても、参加者の感情を無視して話を進めることはできないからだ。

したがって、ファシリテーターには次のようなコミュニケーションの技術が必要となる。

  • 雰囲気づくりの技術
  • 人を動かす技術(意見を整理させる技術もこのひとつ)
  • 人をほめる技術
  • 場を読む技術
  • 思いを引き出す技術
  • 人の話を聴く技術
ファシリテーション」がもたらす5つの効果

会議が参加者の”主体性”と”可能性”を引き出しながら、結論を導き出す場と考える。そのことにより、次のようなすばらしい効果が現れる。

  1. 発言が活発に出るようになる
  2. 決めたことを実行するようになる
  3. 能力を最大限に発揮するようになる
  4. 発言力の弱い人でも意見が言える
  5. 自分の組織に誇りを持てるようになる

次章より上記の効果を引き出すためのファシリテーションのやり方を記載している。

ファシリテーション」の基本

「楽しさ」のパワーこそ会議を充実させる原動力

会議とはまじめにやろうとすれば、堅苦しく緊張してしまい、活発な意見がでないものになる。

人は楽しみながら、どんどん話して決まったことに納得するものであり、合意形成型会議の基本は「楽しい=自由」な雰囲気である。

集まった「全員の意見」を尊重する

みんなに平等に発言させることが重要であり、日頃あまり発言をしない人が発言するようにする。それには「発言回数・発言時間を一部の人に偏らせない進行にする」ことが必要となる。普段あまり発言しない人が発言すると、参加者全員が何を言うのだろう?と興味を持つことが多い、そうなるとお互いに”意見を聴き合う”雰囲気がでてくる。

ファシリテーターは率先して意見を整理しない

「出された意見を整理するのは進行役の仕事」と思っている場合、参加者は「進行役、早くうまく整理しろよ、それが仕事だろ」とまるで他人事のように議長の動きを見ていることになり、主体性が生まれない。そのような場合、ファシリテーターは次のように指示する必要がある。

「みなさん、今出された意見を整理するとどうなりますか?」

つまり参加者が自分で整理することにより、主体性を持たせ、決まった意見に納得感を出すことができる。ただし、参加者に任せきりだと、通常の場合は時間がなくなって結論が出ないという事態が起こるので、その場合はファシリテーターがリードして整理する。

「いい意見」より「たくさんの意見」を引き出そう

最初から「ご意見ありませんか?」と尋ねると参加者は「いい意見を言わなくては」と考えて気楽に発言できなくなってしまう。

「これについて考えられることをできるだけたくさん言って(書いて)ください」と尋ねた方が参加者も気楽になり、出せば出すほど、いいアイデアが生まれてくるようになる。意見の量は、意見の質を担保する。

できれば「参加者に書き出してもらう」方が参加者の主体性や可能性が出て良い結果に繋がる可能性が高い。

会議は「発言の場」ではなく「聴き合う」だ!

会議は誰の意見がいい意見か、を決める場ではない。それではお互いに自分の意見の良い点を主張し合う、対立が起きてしまう。合意形成型会議では、個人で考える以上の考えを作り出す場であり、他の人の意見を聴くことにより、自分の意見を深めていく場です。つまり、意見を聴き合う場とすることが大事となる。

よくやりがちな失敗は「今の発言に対してご意見はありませんか?」と意見を求めてしなう場合。「〜に対して」という言い方では対立が起きてしまう。

そうではなく「他に意見がありませんか?」と出来る限りいろいろな人の意見を聴こうとする思いをベースに進行することが求められる。つまり、普段からファシリテーターは、

  • 常に人の話をよく聴くようにすること
  • 周りの人に気配りすること
  • いつも明るい雰囲気をつくるように心がけること

が求められることと言える。

会議の成功は「雰囲気づくり」にかかっている

楽しい雰囲気は「物と仕掛け」でつくり込む

雰囲気作りは話術だけではなく、物と仕掛けでつくり込むことができる。例えば

アイスブレイク。まず一言ずつ話をさせる。人は誰しも硬い仕事よりも楽しいテーマで話すことにより、楽しい雰囲気がでる。具体的なアイスブレイクには「近況報告」「みんなが知らないあの人」「最近の新聞ネタできになること」「人生で一番輝いていたとき」などがある。

資料は実物、紙に書かれた印刷物をひとつは用意する。全員分ではなく、何人かに一つが調度良い。なぜなら、みんなが同じものを見ることの方が、話し合いが生まれやすくなるからだ。

事前に資料を読んでこさせる仕組み作りは、「事前に意見を集約する」ということ。対象の資料を事前に展開し、期限を区切り、事前にまとめて提出するように指示を出すことで参加者は事前に資料を読み込む必要が出てくる。

最良の結論を導き出す「合意形成サイクル」の中身とは?

合意形成サイクルとは「個人で考える」→「グループで考える」→「全体で考える」

を繰り返しながら結論を練り上げていく方法のことで、参加者一人ひとりの思いを尊重し、満足感を引き出し、コミュニケーションを大切にして行うために必要なしくみといえる。

ステップ1.個人で考える

このステップでは、一人ひとりの思いを全部吐き出させることが必要です。そこで、まず考えをカードに書き出させることが必要となる。カードに書き出すだけで参加者はかなり胸がスーッとし、満足感が得られる。この満足感が”会議の満足感”となり、決めたことを実行していこうという意識へと繋がる。

ステップ2.グループで考える

個人でカードに思いを書きだした後、参加者の心理は「他人の書いたものを見たい!」という思いになる。この「見たい」という心理こそ主体性の芽です。グループ討議はその主体性の芽を大切にし、意見を整理することを行う。ここで気をつけるべきは意見を整理することが目的ではなく、整理しながらさらなる意見を引き出すことも大切となる。なので、グループでの話し合いは、

  • それぞれの意見を出しあう
  • その意見を整理する
  • さらにいい意見をみんなで考えてひとつの意見にまとめる

という3段階でおこなう。ファシリテーターはあくまで整理の手段を全体に通知し、整理そのものは手出ししないことも主体性を尊重する上でとても大事なこととなる。

ステップ3.全体で考える

グループごとでひとつの意見にまとめたら、その意見を全体に発表する。発表し終えたらそのあとは全体に向けて個人で意見を言う時間とする。なぜならグループで決定した意見だとしても、グループ内にその意見に反対という人間もいる場合がある。その場合、再びステップ1.個人で考える時間をとり、また「2.グループ→3.全体」と繰り返しながら深めていく。「個人→グループ→全体」でワンサイクルとなるが、通常はそんなに時間が取れないため、ワンサイクルだけで終わる場合が多い。

結論を出す時間が迫ったらまとめに入る

合意形成サイクルで話し合いが進んだ場合、どのようにまとめるか?それは結論から言うと多数決となる。なぜなら個人の思いを最大限に尊重しながら話し合ったあとの多数決となるので、参加者が実行すること自体に合意しやすい。全員が「ここまで話したのだから多数決で決めるしかないな」と合意していることが大切となる。

最後に絶対に忘れてはいけないのは「やること、担当者、スケジュール」の決定だ。これは会議で決まったことを実行するために絶対に必要となる。また、決めたことがきちんと実施されているか「進捗状況」を確認する人を決めることも大事となる。

参加者の主体性を引き出す進行の技術

会議の準備は「お膳立て」ではなく「おもてなし」

準備のやり過ぎが参加者の意欲を奪う。例えば座っていると資料やお茶が配られ、終わったら片付けをしないで帰る。など「お膳立て」を行うと、「自分は設定された会議に出て、意見を言ってるだけでいい」と思っている人を認めていることになる。それは「結論をつくるのは自分たちの責任である」という主体性な意識が生まれない状況となってしまうのだ。その場合、参加者の意識は

  • 結論をまとめるのは議長の仕事
  • 会議を時間通りに終わらせるのは議長の仕事
  • 参加者が平等に意見を言うようにするのは議長の仕事

と、全て自分の責任ではなく「議長の責任」と考えることとなる。

ではどうすれば、参加者の主体性を奪うことなく、少しでも気分よく、自分の思いを言える雰囲気をつくることができるのか、その雰囲気を作ることを「おもてなし」と呼ぶ。「おもてなし」は参加者の主体性を微妙に引き出すための方法となる。以下に幾つか紹介する。

いつでも使えて効果抜群!「みなさん、どうしましょうか?」

進行を決めるのはファシリテーターではなく参加者とする。例えば会議終了時間まであと10分となった場合、ファシリテーターは「みなさん、あと10分で結論を出さないといけません。どうしましょうか?」と参加者に問うことが大事となる。なぜなら参加者に進行を問うことにが、参加者の主体性を引き出すことになるのだ。

会議を時間通りに終わらせるための考え方

会議が時間通りになった場合は誰の責任となるか。それはファシリテーターではなく、参加者となる。大体において時間通りに終わらない原因は、参加者が時間までに結論を出すように意識した発言をしなかったことなのだ。まずその意識をファシリテーターが持つことが大事であり、時間が延長した場合、ファシリテーターはお詫びの言葉を言ってはいけない。そのお詫びの言葉が参加者を受け身の人間にしてしまう。つまり、ファシリテーターが行うことは、参加者に時間の意識を持たせることになる。それは、

  1. 時間を守れない責任の所在は「参加者」にあることを理解する
  2. 時間を守る雰囲気を作る。あと○○分です、などカウントダウンを行う
  3. 最初に終了時間に終わるように要請し、時間を守ることを宣言する

といった方法がある。

参加者がホワイトボードのところに出てきて、書きながら発言する仕組みを作る

板書をファシリテーターや板書係が行うと「意見を整理する道具」に過ぎず、意見は整理できても参加者の主体性は引き出せない。参加者がホワイトボードに出てきて書きながら発言するようにするようにすることで、「動き」のある会議となり、参加者の主体性を引き出していくことになる。ホワイトボードは他にも以下の様なメリットがある。

  1. 議論を空中戦にしない
  2. 会議に動きが生まれる
  3. 視点が集中することによる一体感が生まれる

このように主体的に会議に関わろうとするよりも、物や仕掛けを考えることがファシリテーターの技術となる。

終わりに

今回学んだことは多く、すぐに実践できることからはじめていきたい。今回学んだファシリテーターの基本を現在のプロジェクトに活かそうと考えたとき、すぐに使える技術とそうでないものがある、と感じた。それは現在のプロジェクトが、遠隔地を繋いでTV会議をしていることが多く、場の雰囲気を作ることが難しいからだ。例えばホワイトボードをすぐに共有できない、会議室の机を変えることができない、などTV会議ならではの制約が多い。しかし、いっそうグローバル化多様性が進むであろう、これからの時代では遠隔地を繋げる会議が主流となっていくことは明らかである。今回学んだことを、遠隔地で繋げる会議でどう活かしていくか、実践を行いながら検討していきたい。