外資系コンサルが実践する資料作成の基本
今回は、常に仕事上向上することが求められる、資料作成の技術について、以前購入した本を読み返してみた。当時は、わかった気になり、身になるまで実践しなかったことが多く、本に書かれている大事なことを多く忘れている自分に気付いた。
これを機に、大事なことをまとめてみようと思う。
外資系コンサルが実践する 資料作成の基本 パワーポイント、ワード、エクセルを使い分けて「伝える」→「動かす」王道70
- 作者: 吉澤準特
- 出版社/メーカー: 日本能率協会マネジメントセンター
- 発売日: 2014/08/20
- メディア: 単行本
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この本は、文書作成で基本となる要点と、作成する資料の種類(PowerPoint、Excel、Word)に応じて王道となるテクニックを紹介している。
テクニック部分については、リファレンスとして参照できるので、今回は資料作成の基本要点をまとめてみることにする。
はじめに
本書は、効率良い資料作成の手順として、以下の3段階でレビューを受けるべき、としている。
- スケルトン作成
- ドラフト作成
- フィックス
1.スケルトン作成は、資料のコンテンツを目次レベル+概要説明レベルで作成したもの
2.ドラフト作成は、スケルトンに従って資料を一通り作成したもの
3.フィックスは、ドラフトを更新して第三者へ見せる品質に仕上げたもの
としている。本書の構成も上記に分かれている。
1.スケルトン作成
WHO、WHY、WHATを明確にする。
WHOは資料を見せる相手を意味する。相手が求める資料の内容はどのようなものが良いか、常に正しく把握する必要がある。
WHATはその資料を使うねらいを意味する。意思決定なのか情報共有なのか、作成する資料によって相手に何をしてほしいのかを明確にする必要がある。
WHYは「相手」と「ねらい」が妥当である理由を意味する。
プロファイリングで効果的に伝える
相手の特徴を分析(プロファイリング)し、相手に最も効果的に資料内容を伝える方法を考える。相手(WHO)の持っている、資料への期待と理解度を加味して、相手が納得する情報の示し方を考える必要があります。
目次単位にPREPで論点を列挙する。
資料のWHAT(ねらい)を伝えて受け入れてもらうには、その主張を支えるWHY(理由)を伝えるだけではなく、WHO(相手)にとってメリットがあることにも触れる必要がある。こうした流れを表すのに適しているのが、PREP法である。
PREPとは、Point(主張)、Reason(理由)、Example(事例)、Point(まとめ)の流れを表した言葉であり、相手の理解を得やすい説明アプローチとして知られる。
相手の「なぜ?」に耐える理由を示す
スケルトンにPREPを組み込むことができても、そこに含めたR(理由)がよく考えられていなければ、相手は資料の内容に疑問を持ってしまう。
そうした事態を招かぬよう、スケルトンを作る段階から、主張の理由に当たる妥当性をチェックする必要がある。やり方は、内容に対して「なぜそう言えるのか?」と根拠を考え、さらにその根拠に「なぜそう言えるのか?」と妥当性を掘り下げる。資料作成者がうまく説明できない部分は、相手も理解することはできない、そのことを意識して資料の構成を考える必要がある。
異論は最初に主張しない
相手の意見と異なる主張を述べる場合には、更なる注意が必要である。相手は理由もなく冒頭から自分の意見と異なる主張を示していると、多くの場合は「自分の考えを否定された」とネガティブなサプライズと捉えて反発する人が多いためである。
そのため、最初のP(主張)に結論を明記せず、最後のまとめ(P)を使って反応を伺うやり方を採用する必要がある。相手の意見に同意を示しつつ、それとは別のやり方にも見るべき点があることを匂わせるよう試みることだ。
2つのスタイル✕6つの発想で案を示す
相手に判断を求める際、大きく分けて、当事者、専門家の2つスタイルがあります。相手、状況により使い分けることが重要である。
- 主体性に優れる当事者
- 客観性に優れる専門家
活動の実行責任を自分が担う場合や、相手がどうしたら良いか判断に迷っている場合は、主張部分で自分の推薦案を示し、理由部分と事例部分で主観を交えた深みのある説明を行い、まとめ部分で相手の承認を得るという構成の方が、「主体性に優れる当事者」として周りの賛同を得やすくなる。
活動の実行責任が資料を見せる相手にある場合や、自分の中である程度決めている相手には、主張部分で複数案を示すに留め、理由部分と事例部分で客観的な事実の列挙と優劣の比較を行い、まとめ部分で重視する観点別に最も評価の高い案を選ぶという構成で組んだ方が、「客観性に優れる専門家」として相手の信頼を得やすくなる。
相手に自分の主張を伝えるに当たって、当事者もしくは専門家のいずれの立場で臨むにしても、押さえておくべき定石があります。それは6つの発想パターンとして知られている。
- つみあげ確認型(演繹法:ロジカルシンキング)
- 論より証拠型(帰納法:同上)
- ひらめき発見型(類推思考:ラテラルシンキング)
- トライ&エラー型(仮説思考:同上)
- 1+1=3型(弁証法:クリティカルシンキング)
- ひかえめ誘導型(背理法:同上)
上記6つの発想パターンは、以下に示す基準で使い分けると、その効果を発揮しやすい。
- こちらの主張に否定的な相手向け → 1.つみあげ確認型
- データにもとづく判断をしたい相手向け → 2.論より証拠型
- 斬新な発想を求める相手向け → 3.ひらめき発見型
- 一般論を好まない相手向け → 4.トライ&エラー型
- 自論を取り入れないと納得しない相手向け → 5.1+1=3型
- 自分の主張こそ正しいと信じている相手向け → ひかえめ誘導型
目次構成は1枚の紙に書いて整理する
まず目次構成を紙に書き出すことから始める。いきなりPowerPoint、Word、Excelに書き込むことはおすすめしない。そこで切り離し可能なA4用紙を用意し、目次構成を1枚の紙に列挙する。1つの目次見出しつき、PowerPointならスライド単位、Wordなら段落見出し単位、Excelなら表単位とし、依頼者へレビューする。指摘が少なければドラフト作成のステップへ、指摘が多ければ再レビューを依頼する。
2.ドラフト作成(文、表)
資料のレイアウトを統一する
資料のレイアウトはヘッダー部/本文部/フッター部に領域を分けて統一する。Excelは条件に応じてシートを分けて作成する。
フォントを決める
推奨する通常指定フォント
推奨する見出し指定フォント
推奨する数字向け指定フォント
- 両環境共通 通常指定フォント、Arial Black
書式と配置を揃える
ドラフト資料の見栄えは、書式と配置で8割決まる。
行間&段落間インデント、図表の大きさ、位置、余白を合わせる。
- 行間インデント指定:(余裕)1.2倍、(標準)設定不要、(字詰)0.85倍
- 段落間インデント指定:フォントサイズの0.5倍
- 余白指定:上下&左右 ※箇条書き時、左は右の1.5倍
(8pt未満)全0.1cm
(8pt〜16pt未満)0.1cm&0.2cm
(それ以外)全0.2cm
- 整列機能を使って文章や図形の位置揃えを行う
→3行以内のメッセージラインをスライドごとに最初に作る
→左上から右下へ流れるようにスライド内の導線を作る
→要素の意味単位でかたまりを作る
(Word)
→見出し単位の段落番号を設定する
→見出し単位で段落開始、終了位置を確認する
→図形の挿入時は、文字の折り返し位置設定をする
(Excel)
→シートの左端と上端は1行1列ずつ空けてから使う
→セルの高さと幅について基準を設ける
用語の定義を統一する
相手が誤解や理解不足に陥らないよう、資料で用いる専門性の高い言葉を定義した用語集を作る。
文章をスリムにする
相手に誤解を与えないよう、余剰な表現は削り落としていく。1つの文章の中に読点(、)が4つ以上登場する。もしくは120文字(A4紙で4行以上)を超える場合は、文を分割する。
定量的な表現にもとづいて説明する
あいまいにならないよう、期限・度合の表現は必ず具体的な数字で説明し、判断に用いるデータは数値を使って説明する。
テキストボックスを読みやすくする
行当たり折り返し設定、行数、位置揃えにルールを設ける。
(1行当たり文字数)5文字以上35文字以下 または 行数✕2以上
(1行文章)左揃え、右揃え
(複数行文章)両端揃え
(選択肢、数値)中央揃え
表項目はツリー階層に組み合わせる
すべての項目を横に平たく並べるのではなく、意味のある要素ごとにツリー階層を作る。列項目は2〜3段の組み合わせに整理する。読み手の立場になり、左&上から順に読み進めて理解できるように列項目を順に並べる。
重複内容はグレーで残す
あとで検索や絞り込みが簡単に行えるよう、重複する内容は薄いグレー文字で残す。
選択式の項目値や説明は別シートへ
複数セルから参照される共通の可変数値や選択式の項目値はまとめて別シートへ管理する。
セル結合は使用しない
範囲指定を使って関数を設定する場合に編集作業が煩雑になるため、セル結合は使わない。複数セルにまたがる項目名は「選択範囲内で中央」を使う。
細かい情報はグループ化で表示させない
要旨を伝えるサマリー表を簡単に示せるよう、結論や集計結果の根拠となる詳細情報はグループ化して表示/非表示を切り替えることができるようにする。
外枠は実践、罫線は点線を基調にする
野暮ったい表の形式に読み手がネガティブな印象を持たれないよう、表の見た目をすっきりさせる。なくても分かる罫線は削除する。
3.ドラフト作成(図)
チャートとグラフを使い分ける
文章だけでは伝えにくい説明には図表を用いる。図表には、目で見て判断するための概念的なチャートと、データで判断するための統計的なグラフに大別でき、目的に応じて使い分ける。
チャートを使って情報を図解する
タテヨコ・関係性・時系列の3タイプでチャートを作成する。
チャート①優先順位を図解する
(タテヨコ:象限図)分けられた領域ごとに優先順位を付けることができる。
チャート②一覧で図解する
(タテヨコ:マトリクス図)横の要素に重複がなく、縦の要素は同類の内容を並べるのに使う。
チャート③ロジックを図解する
(関係性:階層図)要素を分かりやすい単位に細分化するのに適している。
チャート④グループ分けを図解する
(関係性:集合図)複数のグループにまたがる要素を洗い出して、それらを検討する際にこの図を使って整理する。
チャート⑤関係性を図解する
(関係性:相関図)コミュニケーションやシステムや機能の相互関係を分かりやすく把握できる。
チャート⑥フェーズの変化を図解する
(時系列:展開図)時間軸に沿って対象の変化(成長、拡大、発展など)をフェーズごとに把握する。
チャート⑦時間に沿った順序を図解する
(時系列:プロセス図)おもにフローチャートやガントチャートなど、スケジュールを表すのに使う。
チャート⑧繰り返しの流れを図解する
周期的なイベントや一過性で終わらせたくない改善活動を説明する際に使う。
グラフを使って統計情報を図解する
量・変化・分布の3タイプの指標でグラフを作成する。
グラフ①大きさを図解する
(量:棒グラフ)規模の大小を感覚的に把握するのに使う。
グラフ②割合を大きい順に図解する
(量:円グラフ)分析対象データに占める上位数種類の要素を特定したり、要素間の割合を比較するのに役立つ。
グラフ③割合を網羅的に図解する
(量:面積図)分析対象データに占める上位数種類の要素を特定したり、要素間の割合を比較するのに役立つ。
グラフ④時間に沿った変化を図解する
(変化:折れ線グラフ)対象の傾向分析に役立つ。
グラフ⑤量の変化を図解する
(変化:面グラフ)上限値を意識した傾向分析に役立つ。
グラフ⑥量のばらつきを図解する
(分布:ヒストグラム)要素の同数分布を把握するのに役立つ。
グラフ⑦ばらつきの関係性を図解する
(分布:散布図)要素のばらつきから特定の観点にもとづく傾向を見つけるのに役立つ。
グラフ⑧最大と最小の広がりを図解する
(分布:エラーバーグラフ)集計結果に対するベストケースとワーストケースを把握するのに役立つ。
グラフ⑨多面的な評価を図解する
(分布:レーダーチャート)スコアカードによる指標値の測定結果を把握するのに役立つ。
図形の形状にルールを設ける
図形が持つイメージを利用して直感的に分ける使い方をする。
図形①情報や概念を図解する
- (四角形)具体的、事実
- (三角形)上下関係、目標、マイルストーン
- (丸四角形)抽象的、推測
- (円形)あいまい、概念
- (扇型)割合
図形②つながりの向きと強弱を図解する
- (直線・カギ線)明確な紐付き
- (曲線)緩やかな紐付き
- (実線)継続的なつながり
- (点線)一時的なつながり
- (標準矢印)普通の相関
- (開いた矢印)緩やかな相関
- (鋭い矢印)強い相関
- (ひし形矢印)強いつながり
- (丸型矢印)やや強いつながり
図形③集合関係を図解する
- (大かっこ)まとまり
- (中かっこ)集約元と先
図形④時間の流れや状態変化を図解する
- (矢羽)時間の流れ
- (三角形・ブロック矢印)状態の変化
- (ブロック吹き出し)内容に対する結果
図形⑤理由や説明を図解する
- (四角形・線形吹き出し)具体性のある理由、追加情報
- (丸四角形・丸形吹き出し)意見や推測
- (雲型吹き出し)推測や思い
標準にはない図形を表現する
- 図形の組み合わせ
- 頂点の編集
- フリーフォーム機能によって、標準にない新しい図形を作る
変更時に手間が生じない図形を使う
重ねる図形は順序と透かしを設定する
位置揃え/サイズ指定/図形の変更をする
最初は色を使わずに作る
最初から多種の色を使うのではなく、まずは色を使わずにページを作成し、強調や色分けが必要な箇所を見極める。
強調・基本・極薄のベースカラーを決める
カラーパレッド(色相✕彩度)から好きな色を選ぶ。次に明度から「強調色」を最初に決め、さらに明度を半分弱めた「基本色」、その半分に弱めた「極薄色」を定める。それ以外は背景色と同じにするか「無彩色」を使う。
- (強調色)特に注目を集めたい箇所に用いる。1ページ数カ所のみ
- (基本色)見出し、注目を集めたい箇所に用いる
- (極薄色)ある程度は意識してほしい箇所に用いる
- (無彩色・淡)見やすさのために色付けする箇所に用いる
- (無彩色・濃)無彩色・淡よりも強めに表現したい箇所に用いる
相手に合わせてベースカラーを使い分ける
相手組織が持つテーマカラーに合わせてベースカラーを用意する。特に指定がない場合、感情的に訴えかける資料は暖色系、論理的に訴えかけたい資料は寒色系を使う。
パターンを使って色数を減らす
塗りつぶしにパターンを用いることで、単色で複数の内容を表す。
Excel表は意味の単位で色系統を分ける
- (全体)セル全体を選択して背景色を白にする
- (列)第1層を強調色、第2階層を基本色、第3階層を極薄色にする
- (セル)ベタ打ちセルは白色、自動算出セルは薄黄色の背景にする
4.フィックス作成
印刷時に文章が切れないようにする
Excel表内で文章が書かれたセルすべてに対し、セル末に改行(Ctrl+Alt)を挿入する。文末がセル右端に近接している数だけ改行数を増やす。
グレースケール設定を行う
スライド内の全オブジェクトにグレースケール設定を行うことで、意図しない線の表示や白黒反転を防ぐ。
メモやファイリング向けに余白を作る
印刷資料をクリップで閉じたり、メモを書き込める余白を確保するために、ヘッダー・フッター・資料両端の余白を整える。または余白を極限まで減らすことで、1枚の紙に表示されるコンテンツ量を増やす。
Excelの印刷範囲とサイズを確認する
Excel資料は印刷範囲・印刷タイトルを設定し、用紙サイズもExcel側とプリンター側で一致させる。
不要なスライドマスターを削除する
PowerPointの資料は、スライドマスターに登録されている不必要なマスターを削除してからファイルを配布する。
目に見えない情報を資料から取り除く
ヘッダー/フッターと属性情報に設定されている内容を確認し、不要なものを削除する。
資料の書き換えを防ぐ
内容を変更させたくない資料は、保護設定またはPDF形式にファイルを変換し、読み取り専用にしてからファイルを配布する。
終わりに
今回は資料作成に必要な王道パターンを本書より学ぶことが出来た。今後はこれをもとに資料作成し、文書作成のスピードが上がるよう実践を繰り返して習得していきたい。